サンプリングの目的・分類・抽出方法

内部監査概論

サンプリングの目的

一般的に、サンプリングの目的は、対象となる母集団について、その一部(サンプル)のみを検証することによって説明することにある。

サンプリングの一例を以下に示す。

ラーメンチェーン店において、有効回答を得ることが出来た1,000人分の食後アンケート調査によると、塩ラーメンが一番「好き」であると、400人 (40%)から好評価を得ている。

上記のアンケート結果はラーメンチェーン店の利用者について、一部のアンケート回答者を検証することによって説明しているサンプリングの一例です。

サンプリングを利用する状況における特徴

  1. 詳細な状況が必要ではないこと。上記例では、知りたいのは 好みの動向であり、何人が好きであるかなどの詳細な把握ではない。
  2. 母集団を構成している要素の数が多数であること。上記例でも、たとえば、1店舗のみであれば、その店舗の来客数のみを検証すれば良い。

つまり、サンプリングは一般に、結論を出す上での効率性による利点が、すべてを検証していないことから生じる損害を上回る場合に用いられる手法だといえる。

サンプリングに伴うリスク

(1)サンプリングリスク

サンプルを検証した場合の結論と、母集団すべてを検証した場合の結論が異なるかもしれない、というリスクである。上記例では、実際の好みはとんこつラーメンが首位となる可能性があることを指す。

(2)非サンプリングリスク

サンプルの性質とは無関係な要因によって、サンプルを検証した結果が母集団すべてを検証していたら得られていた結果とは異なるリスクをいう。例えば、同じアンケート回答者の回答を複数回カウントしてしまうようなミスによるリスクを指す。

サンプリングの分類

サンプリングには統計的サンプリングと非統計的サンプリングがある。

監査ソフトウェアの可用性が増大する中で、統計的なサンプリングをまず検討し、費用対効果の面で統計的サンプリングが利用できない場合に非統計的サンプリングが利用されることが多い。

統計的サンプリング

統計的サンプリングと分類するためには、以下の要件を満たさなければならない。

  1. サンプルが無作為に抽出されること
  2. 抽出されたサンプル単位は概念に基づき定量的に評価されること

統計的サンプリングを用いる場合、サンプリング結果によりサンプリングリスクを定量化することが出来る為、サンプリングリスクを許容レベルに抑えるようコントロールできる。

統計的サンプリングの利点

  • サンプル結果の定量的な算出が出来る
  • サンプリング・リスクの定量的な測定ができる
  • 集計した証拠の十分性の測定ができる
  • 正確性と信頼性の程度を明瞭に特定できる
  • ソフトウェアの適用が容易である
  • 経営に対してより客観的な提言が出来る

統計的サンプリングの欠点

  • 無作為なサンプル抽出を行うため、よりコストと時間がかかる。
  • 無作為なサンプル抽出法が確立されていない場合、サンプリング・リスクの可能性がある。
  • 統計や専用ソフトウェアの使用の為、従業員に対し追加的な研修をしなければならず、その分のコストが増える。

非統計的サンプリング

非統計的サンプリングは統計理論に基いていない方法である。例えば、依頼人の売掛金残高が1,000人の顧客から構成されていたが、金額が大きい顧客がごく少数しかいなかった場合、内部監査人の判断でその金額の大きい顧客のみ選択して検証を実施することがある。非伝統的サンプリングの場合、サンプリングリスクを客観的に測定することが出来ない。

非統計的サンプリングの利点

  • 内在するリスクが最大の案件に関し、サンプリング・プロセスに内部監査人の経験則に基づいた主観的な判断を投入することができる。
  • 統計的サンプリングほどコストがかからず、同様の効果的かつ効率的なサンプリング結果を導ける場合がある。

非統計的サンプリングの欠点

  • 主管に見る為、サンプル結果に客観的な統計的な推論を加えることが出来ない。
  • サンプリング・リスクを定量的に測定できない。
  • 内部監査人自身の経験則による部分が大きい為、経験の乏しい内部監査人には不適切である。

サンプリングの抽出方法

(1)乱数サンプリング

すべてサンプル項目は、乱数表等を用いることで同じ確率で抽出される可能性を有する。

(2)系軸/間隔サンプリング

無作為なスタートによって、すべてのサンプリング項目は、同じ確率で選択される可能性を有する。但し、母集団が体系的な順序で並んでいるときはには、偏ったサンプルを抽出する可能性がある。

(3)層別ランダムサンプリング

階層化することにより、母集団中の際の影響を減らし、サンプル数を減らすことが出来る。

例えば、売掛金について、1000万円未満は課長承認、1000万円以上は部長承認という規定があった場合、既定の準拠性について、1000万未満の売掛金サンプルのみを調べるよりも、1000万以上とそれぞれの売掛金からサンプルを抽出してサンプリングを実施する方法である。

どのようにグループを階層化するか、グループをいくつに設定するか等は内部監査人の判断力が要求される。一度母集団が階層化されると、状況によって乱数サンプリング、系軸/間隔サンプリング等の適用が可能である。

(4)その他のサンプルの抽出方法

①ハップハザード・サンプリング

サンプルの特徴に対する偏りを一切無視した行き当たりばったりの抽出方法である。母集団を請求書としたハップ・ハザードサンプリングを適用する場合、内部監査人はその請求書の内容にかかわらず、手にした請求書をサンプルにする。

②ブロック・サンプリング

連続の単位で構成されるサンプルを指す。最初の30人のアンケート回答者、1週間の書類等をサンプルとして抽出する方法で、通常、最も好ましくない方法である。

統計的サンプリングの重要な概念

統計的サンプリングにおける例と重要な概念は以下の通りである。

ー設例ー

ある地方で、中学生の虫歯保有率を調査する為にランダム・サンプリングを行ったところ、200人中85人が虫歯をもっていた。この地方全体の中学生の虫歯保有率Pは95%の信頼度で推定すると、信頼区間0.355<P<0.495の範囲にある。

すなわちこの地方の中学生の虫歯保有率は95%の信頼レベルで、35.5%-49.5%の範囲に存在するということを意味する。

この場合、95%が信頼レベルであり、0.355<P<0495が信頼区間である。

予想逸脱率、予想虚偽表示

母集団全体での予想される逸脱率、あるいは虚偽表示金額。

許容逸脱率、許容虚偽表示

監査目的が達成されたとの結論に達することのできる母集団における誤謬の最大値。

精度/許容できるサンプリング・リスク

サンプリングにおいて要求される制度とはm許容できるサンプリング・リスクの量であり、たとえば5%(±2%)のように表現される。

信頼レベル/信頼水準

信頼レベルとは、無作為に抽出されたサンプルに基づく母集団の見積もりが、特定の範囲に含まれる度合いのことである。信頼性のレベルは通常%で表示される。

信頼区間

信頼区間とは、無作為に抽出されたサンプルに基づく母集団の見積もりが、どのような範囲に含まれるかという概念である。信頼区間は通常、上限と下限が表示される。

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