人事および給与プロセスとは従業員に対する給与を決定し、勤務時間に応じて給与を支払うプロセスである。当記事では、工場労働者を前提として時給ベースで給与が計算され、支払いは小切手で行われるものとする。
人事および給与プロセスの内部統制
人事および給与プロセスにおいて採用、給与などが決定される
人事部門において従業員の採用、解雇、昇給、昇格等が承認され、情報の保管が行われる。人事部門は承認及び情報の保管を行う部門であり、給与計算等の記録は行わない。従業員が退職した場合、その情報はただちに経理部門の給与計算担当に速やかに通知する。この内部統制は、実在しない従業員に対して給与が支払われなることを防ぐためである。
従業員はタイムカード、作業時間表に記入し、承認を受ける
工場の従業員は毎月タイムカードおよび、どの作業に何時間費やしたかを作業時間表に記入する。上司である監督者は、毎週タイムカードと作業時間表を照合し、間違った時間を請求していないかを確認する。
給与計算担当は、給与計算を行い、小切手の準備をする
経理部門内の給与計算担当では、タイムカード、作業時間票の情報をもとに給与計算を行い、給与ファイルを作成する。給与ファイルとは、従業員別に、氏名、勤務時間、基本給などの明細を記録したものである。また、給与台帳への記帳を行う。給与計算担当において、給与小切手を従業員別に準備するが、サインは行わない。給与計算担当はあくまでも記録を担当する部門であり、小切手の保管責任は負わないからである。
給与小切手は財務部長によってサインされ、配布される。
給与小切手は財務部長によってサインされ、給与計算の業務から独立した者により、配布される。現金により給与が支給される場合は、受領した従業員からは受取のサインをもらう。配布の際に、受取人が不在の給与小切手は、財務部門で保管管理され、この間、受取人不在の給与小切手は特別な預金口座に預けられる。
内部監査部門が人事部門の情報と経理部門の情報を照合する。
内部監査部門は人事部門が保管する各従業員の人事記録と給与計算担当が持つ給与ファイルを照合し、未承認の賃率の変更等が行われたり、計算されていないかを確認する。
現金や給与小切手を扱う従業員に信用保険を掛ける
不正防止のために給与小切手を準備する給与計算担当の従業員や小切手を配布する者等を対象にして保険をかけておく。
人事・給与プロセスの監査手続き
実在性確認 | 勤務時間 | 給与計算記録とタイムカードと照合する |
実在性確認 | 給与レート | 給与計算記録と人事記録を照合する |
実在性確認 | 給与計算 | 給与計算記録と源泉徴収額を確認する |
観察 | 職務の分離 | 職務が分離されているか観察する |
実在性確認 | 実在しない従業員 への給与支払い | 給与計算記録と人事記録、タイムカードを照合する |
不適切な勤務時間を用いて計算された給与の支給を発見する手続き
不適切な勤務時間を用いて計算された給与の支給を発見するためには、給与計算担当が作成した給与ファイルに記録されている勤務時間、およびそれをもとに計算された支給金額からサンプリングし、タイムカードや作業時間表と照合する。
不適切な給与レートを用いて計算された給与の支給を発見する手続き
不適切な給与レートを用いて計算された給与の支給を発見するためには、給与ファイルに記録されている給与レートおよびそれをもとにして計算された支給金額からサンプリングし、人事部門に保管されている人事記録上の承認された給与レートと照合する。
給与計算における誤謬を発見するテスト
給与計算における誤謬を発見するためには、給与ファイルの金額と、給与や源泉徴収額をまとめた書類等を照合して、所得税の金額、控除額と比較することにより、計算ミスがないかを確認する。
職務の分離が適切に行われていることを確認する手続き
人事部門は承認および情報の保管、給与計算担当は記録、財務部門が小切手の保管を担当する部門である。この「職務の分離」が適切に行われているかどうか観察によって確認する。
実在しない従業員に対する支払いが行われていないかを確認する手続き
実在しない従業員に対して支払いが行われていないかを確認するテストとして給与計算担当が作成した給与ファイルからサンプリングし、タイムカード、作業時間表、人事部門が保管する人事記録、給与や源泉徴収額をまとめた書類等と照合する。
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