内部監査の発展

内部監査概論

内部監査の発展

内部監査の発展の経緯は、「外部監査制度が確率した1930年以降」、「内部監査人協会(IIA)が設立された1940年以降」、「米国において不祥事が相次いだ1970年代以降」、「COSOが発足した1980年以降」、そして「企業改革法の成立をもたらす一連の企業会計不正が発覚する2000年以降」に大きく分類することができる。当記事では米国の内部監査の発展を中心にする。

<内部監査の発展のまとめ(〜COSOレポート)>

〜1929組織の業務活動のレビューが内部監査活動であった。
1930〜外部監査制度の確立
1933:1933年証券報の成立
1934:1934年証券取引法の成立
1940〜1941:内部監査人協会(IIA)の設立
1947:「内部監査人の責任」の発行
1968:倫理綱要の承認
1970〜1972:ウォーターゲート事件
1976:ロッキード事件
1977:海外腐敗行為防止法の成立
1978:内部監査の専門的実施の基準の承認
1980〜1985:トレッドウェイ委員会組織委員会(COSO)の発足
1992:COSOレポート内部統制の統合的なフレームワークの発表

内部監査概念の形成

内部監査の最も原始的な形式は、個人が実施した業務の自己評価、もしくは個人の実施した業務を第三者が評価することにあった。この評価機能は経営者の日常的な役割だったが、組織の業務量が増え、複雑化するにつれて、経営者一人が全ての業務が有効に運営されているかどうかをレビューするのは不可能になっていく。

経営者は、組織の業務活動をレビューし、経営者に報告することに直接責任を負う個人を任命する必要に迫られ「内部監査活動」という概念が生まれることになる。ただ、初期の内部監査は、資産の適切な保全、法令の遵守、財務報告の性格な記録を確保するためにあった。従業員の不正や誤謬を防止するために構築された内部牽制システムに対して内部監査活動が行われた。

1939年以降

1930年代、組織体の規模、複雑さが更に増すにつれ、内部監査人の機能は自然と拡大し、組織の全般的な統制プロセスを問題視するようになってきた。また、米国では1930年代は、1933年証券法、1934年証券取引法等により、外部監査人による財務諸表監査が制度化された時代である。財務諸表監査の目的は、企業の経営者が作成した財務諸表の適正性について意見を表明することにある。ここで重要なことは、財務諸表監査は試査(テスト・ベース)を用いるということである。試査とは、全ての取引を調べるのではなく、部分的に調べることによって全体の合理性を統計学の理論に基づいて予測することである。すなわち、外部監査人による、財務諸表監査を受けるためには、内部統制が整備されていることが前提となり、内部統制の重要性が増すことになる。同時に、内部監査人はその内部統制の有効性を評価する役割を担うようになった。

内部監査人協会(IIA)の創設

1941年ニューヨークにおいて内部監査人協会(IIA)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州の法人として、ウォール街の120番地に設立された。IIAは内部監査の実務基準を順次制定し、体制を整備すると共に様々な変遷を経て、内部監査人の地位を確立していった。

海外腐敗行為防止法の成立

1970年代、米国に政治的、社会的な混乱が広がった。ニクソン大統領退任の原因となったウォーターゲート事件では、後の証券取引委員会の調査により、1976年までに450社を超える米国企業が海外の政府関係者や政党への賄賂など、潜在的な違法性のある支払いを総額4億ドル以上実施していることが発覚した。

一連の不祥事を受けて、1977年に制定された海外腐敗行為防止法は、賄賂禁止条項のみならず、証券取引委員会(SEC)に証券を登録している上場企業に対し、会計条項として内部統制の構築及び維持を要求した。それは、多額の賄賂供与を可能とする裏金を捻出する不正な会計処理が不祥事の根源にあるとの認識があったためである。

海外腐敗行為防止法の施行以後、内部統制、企業のあり方に対する議論が台頭するようになり、企業内の内部監査部門は強化されていく。

以下に海外腐敗行為防止法が要求する内部統制を抜粋する。

  • 資産の取引、処分を合理的に、詳細に、正確に、且つ適正に反映する帳簿、記録、勘定の作成、及び保存。
  • 適切な内部会計統制の立案、維持等。

トレッドウェイ委員会の成立とCOSOフレームワークの確立

海外腐敗行為防止法成立の後も、1980年代の米国では外部監査人によって無限定意見が提出された直後にその企業が経営破綻するということが相次いだ。内部統制に関連する5つの団体は、1985年、不正な財務報告の発生を減少させることを主たる目的として、トレッドウェイ委員会を共同で設立し、1992年にCOSOレポートを公表し、内部統制の定義のフレームワークを確立した。COSOフレームワークは事実上内部統制の世界標準となる。

企業改革法の成立

財務諸表監査の変遷

先にのべた通り、外部監査人は経営者が作成した財務諸表の適正性について意見を表明する。従来内部監査人は、業務監査及び企業の内部統制の知識を活かして外部監査人を支援してきた。1990年代、その関係に変化が見られ始めた。「the Big 5」と呼ばれる大手監査法人が、外部委託という形で内部監査機能に責任を持ち始めたのである。企業の内部監査人は次第に監査法人の指示に従い業務を遂行するようになる。

内部監査の外部委託は、監査法人にとっての莫大な収入源だけでなく、企業にとっての内部監査コストの削減、監査法人の持つ専門的なスキルの確保という利点があった。

内部監査人にとっても大手監査法人のもとで働くことにより、継続教育の機会、有利な条件での転職の機会を得ることが出来た為、この傾向は1990年代を通して継続することになる。

不正の発覚と企業改革法

2001年11月、大手エネルギー商社のエンロンは、巨額の損失を含む業績の訴求修正を発表した。その後、信用不安を引き起こし、12月には米国連邦破産法を申請して経営破綻した。不正な会計処理には、エンロンの経営陣が関与していたことが明らかになり、さらに外部監査人アンダーセン事務所による監査も問題をしなかったことばかりか、逆にその不正な会計処理に深く関わっていたことが発覚した。内部監査機能そのものが監査法人の掌中にあった為、内部監査人として警鐘を鳴らしたという事実もほとんどなかった。

エンロンの企業会計不正に引き続き、会計事務所が機能していない実態は米国で相次いで発覚していく。事態を重く見た米国政府、及び議会は審議を急ぎ、エンロンが最初に会計上の不正を公表してから僅か9ヶ月後の2002年7月に企業改革法が成立した。

企業改革法は、11章から構成されており主に企業責任、開示制度、監査人の独立性、及び会計事務所(監査法人)の監視体制の強化等を規定している。

<企業改革法の構成>

1公開会社会計監視委員会(PCOB)企業改革法が適用される企業(公開企業)を監査する監査法人を、監視・監督する機関の設立、監査法人のPCAOBの登録義務等。
2監査人の独立性監査法人が公開企業に対して、列挙された9つの非監査業務を監査業務と同時に提供することの禁止、監査人のローテーション等。
3企業責任企業の最高経営責任者(CEO)及び最高財務責任者(CFO)に対し、SECに提出する定期財務報告において報告内容を保証し宣誓することを義務付ける等。
4財務情報開示の強化経営者に対し、内部統制の整備状況と運用状況に関する内部統制報告書を年次報告書と共に提出することを義務付ける等。
5証券アナリストの利益相反登録証券業協会及び国内証券取引所による証券アナリストの取り扱い等。
6証券取引委員会(SEC)の財源と権限SECの予算の承認。
7調査及び報告信用各付け機関に関するSECの調査・報告等。
8企業における刑事上の詐欺行為責任内部告発者保護等。
9ホワイトカラー犯罪に対する罰則強化SECに提出する定期財務報告において、報告内容がSECの要求を満たしていないことを知りながら保証し、宣誓した場合の罰則等。
10法人税申告書CEOによる法人税報告書への署名に関する乗員の見解等。
11企業不正及び説明責任連邦量刑ガイドラインの改正等。

内部監査部門への影響

企業改革法によって、財務諸表監査を実施する監査法人による内部監査の外部委託が禁止されたことは、内部監査人に大きな影響を及ぼした。内部統制の評価、改善勧告、良質なコーポレート・ガバナンスの推進等、内部監査人の専門的職務に対する責任が拡大したのである。また、社外取締役で構成される監査委員会との関係も従来より強固になった。

ただ、企業改革法は財務諸表監査を実施しない監査法人の内部監査の外部委託は禁止していないため、現在でも外部委託は活用されている。また、企業によっては、コ・ソーシングを有効に活用する場合もある。コ・ソーシングでは、主要な資源は強固な組織内の内部監査機能に依存し、特殊なスキルが必要な領域で監査法人を利用する。コ・ソーシングは、企業の内部監査機能を強化すると共に、企業価値を高めるために寺社では用意できない能力を利用するという効果がある。

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