「実施基準」2320:分析及び評価

分析 基準

内部監査における分析的手続

「実施基準」2300では内部監査人は内部監査の個々の業務の目標を達成するために、十分な情報を分析することを義務付け、ここで扱う「実施基準」2320では、内部監査人が情報の分析に基づいて業務の結果を得ることを義務付けている。

分析的手続きは内部監査においても効率的な監査技術として重視されている。

「実施基準」2320:分析及び評価

内部監査人は、適切な分析評価に基づいて、結論および内部監査(アシュアランスおよびコンサルティング)の個々の業務の結果を得るようにしなければならない。

分析的手続は、コストが低く、実施も容易である。結果を素早く提供出来る等の利点があり、米国の外部監査基準では、監査計画及び全体的レビューの段階において分析的手続きを義務付けている。

定義:一般的な分析的手続

分析的手続きとは、財務データ相互間または非財務データと財務データ間の予測可能な、本来あるべき関係を分析することにより、財務情報の合理性を確かめる手続きである。

分析的手続きの実施手順(財務監査の例)

  1. 勘定残高に対する予測を立てる
  2. 予測と監査対象部門の勘定残高との際の額について、原因の調査の必要ない額を決定する。
  3. 予測と監査対象部門の勘定残高を比較する。
  4. 予測との大きな差異(2で決定した額以上の額)の原因を調査する。

分析的監査手続の例

  1. 当期の情報と前期の同様の情報に基づいた期待、予算又は見通しとの比較
  2. 財務的情報と適切な非財務的情報の間の関連性調査(例えば、給与経費支払記録と従業員平均人数の変化との比較)
  3. 情報の要素間の関連性調査(例えば、支払利息の変動する負債総額の変化)
  4. 組織体の他の事業単位や組織体が属する業界の同様の情報に基づいた期待と情報の比較

分析的手続きは金額、物理的数量、比率またはパーセントを使用して行われる場合もある。特定の分析的手続きには、比率分析・傾向分析・回帰分析、合理性テスト、期間比較、予算との比較、予測及び外部の経済情報等が含まれる。分析的手続きは、内部監査人が、さらなる監査手続きが必要な状況かを識別する手助けとなる。内部監査人は、「基準」2200に含まれるガイドラインに従い、個々の業務の計画策定において、分析的手続きを利用する。

分析的手続の有効性が依存する項目

  1. データ間の関係の合理的と見える程度と予測可能性
  2. データの信頼性
  3. 予測の精度

分析的手続の有効性がデータ間の予測可能性に依存するということは、逆にデータ間の関係に予測可能性がない(低い)場合には、分析的手続きの有効性が低いということになる。

予測値を算出するに当たっては、一般に以下の仮説が成立する

  1. 流動的または不安定な環境における関係は、安定した環境における関係よりも予測を立てにくい。例えば、新設部門や一つの商品に売り上げを依存する組織体の場合、予測は立てにくい
  2. 貸借対照表項目は、損益計算書項目よりも予測を立てにくい。当期末の現金の残高と前期末の残高を比較しても、関連に予測性があまりなく、合理性の判断が難しい。
  3. 経営者の裁量を含む関係は時として予測を立てにくい。広告宣伝費のように、経営者の裁量で決まる項目は予測が立てにくいが、売上原価の金額は経営者の裁量で直接的に動くとは考えにくい為、予測を立てやすい。

監査証跡を得る為の分析的手続

内部監査人は、内部監査(アシュアランス及びコンサルティング)のここの業務において、監査証跡を生成する為に分析的手続を利用する場合がある。分析的手続の範囲を決定する際には、内部監査人は以下のことを考慮する。

  1. 監査対象領域の重要性
  2. 監査対象領域のリスク・マネジメントシステムの評価
  3. インターナル・コントロール・システムの妥当性
  4. 財務情報と非財務情報の利用可能性と信頼性
  5. 分析的手続の結果の予測できる精度
  6. 組織体が属する業界についての情報の利用可能性と比較可能性
  7. 他の監査手続きのもたらす監査証跡の程度

分析手続の方法論

内部監査においては業務の性質により分析する事象は異なる。例えば労務管理部門の監査においては、従業員数、従業員回転数、研修への参加率、非財務情報も当然分析の対象となる。分析手続の方法論としては回帰分析、トレンド分析、比率分析がある。

回帰分析

回帰分析は、数種類の変数間の関係を調査する時に用いられる。

(1)単回帰分析

例えばマーケティング費用の増加に伴う売上高の増加の関数を単回帰分析で表すとする。この場合、変化をもたらす要因となる変数であるマーケティング費用が独立変数、変化にさらされる側の変数である売上高が従属変数となるい。これらの二つの変数間の関係をしましたものとして。下記散布図がある。

図のように、従属変数(売上高)はY軸に、(マーケティング費用)はX軸に設定される。この図の点が示すように、費やされたマーケティング費用とそれに伴い達成された売上高の間には一定の関係があることがわかる。このとき、従属変数Yと独立変数Xの関係は、以下の1次関数で表される。

Y=ax+b(Y:従属変数、X:独立変数、a:傾き,b:傾き)

以下の図は、一定の関係を保つ独立変数と従属変数との間に一部例外が生じた場合の散布図である。矢印で示した2点は何らかの不規則性やエラーを示し、その原因を特定する為の追加テストや質問が必要となる。

単回帰分析

(2)重回帰分析

重回帰分析とは単回帰分析で説明した例において、売上高の増加をもたらす変数(独立変数)が複数だった場合に、それら変数が売上高にもたらす影響を測定することが出来る。例えばマーケティング費用の他に原材料費や人件費、広告宣伝費などを加味した場合ある。この場合の計算式は、増やしら独立変数の数だけ、新たに独立変数Xと傾きaを足し加えていく形となる。

Y=b+a1X1+a2X2+a3X3・・・anXn

重回帰分析

比率分析

当期の上場の合理性を判断するために財務比率分析が利用される。

(1)流動比率 = 流動資産/流動負債

流動資産を流動負債で割った比率である。短期の支払い能力を示し、流動比率が高ければ、その企業の支払い能力は高いといえる。

流動比率は200%が理想とされている。

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(2)当座比率、酸性比率 = (現金+順売掛金+有価証券)/流動負債

当座比率の分子は流動資産から棚卸資産を差し引いた金額であり、流動比率よりも厳しい安全性を表示する。

当座比率は100%以上が望ましい。

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(3)売掛金回転率 = (純掛売上高)/純売掛金(平均残高)

売掛金回転率とは、売掛金の回収リスクの程度を表し、売上高を売掛金(期首期末平均残高)で3った比率である。売掛金が1年に何回転するかを示し、売掛金回転率が高いほど売掛金の回収は良く、運転資本の管理は良い。

(4)棚卸資産回転率 = 売上原価/棚卸資産(平均残高)

棚卸資産回転率とは、売上高を棚卸資産(期首と期末の平均残高)で割った比率である。棚卸資産が1年に何回転するかをしめし、本業の営業活動である商品や製品の販売が効率よく行われているかを示す。

(5)負債比率 = 負債尾/自己資本

負債比率とは、負債を自己資本で割った比率であり、債権者に対する弁済能力を表す。負債比率が低いほど自己資本に依存する対する割合が高く、財務安全性が高いと言える。

(6)売上高増減率 = (当期売上高-前期売上高)/前期売上高

売上高増減率とは、当期売上高から前期売上高を引いた増減額を前期売上高で割った指標である。

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